映画【アラモ】で思う諸々の事、そして土曜恒例アメリカン・ビーフステーキ
2019年 06月 22日
そこに私ごときの話で申し訳ないけど(私のブログなんだから私の事でも良いんだけどね)、私も小学生の時、図書館の蔵書を殆ど読み尽くした「やる気」の子供だった。児童図書なんかあっちゅ~間に読み尽くしてしまい、やがて背表紙は擦り切れ、燻されて煤が付いているのか手垢で汚れているのか解らないような、タイトルすら見えなくなっている古い書物の一個連隊が、図書室の本棚の一番はじっこの下段にひっそりと眠っている事に気づいた。
手に取ってみると、裏表紙の裏には個人名の蔵書印が押されている。卒業生の誰か、きっと町の名士の遺品から寄贈されたものだったのかも知れない。それを掘り起こすようにして次々と読んだ。
古い騎士道物語などが多く、それは当時の文部省推薦の子供向け図書などと比べたら桁違いに面白かった。「アーサー王と円卓の騎士」「アイヴァンホー」「湖上の美人」「紅はこべ」など到底小学校の児童向け図書ではないものが出て来る、出て来る。その発掘が楽しくもあり、勿論内容も面白くて、毎日貪り読んだ。
子供が本を読むには良い時代でしたね、家庭用ゲーム機など無く、テレビで見るアニメも少ない時代。子供は外でパラパラ遊ぶか、本を読んだりお絵かきしたりして遊んだのです。
どれだけそこから学べたかは甚だ怪しいけれど、やはり親の影響で小学生の頃から古い洋画にハマっていた生意気な児童にとって、あそこにあった古い書物はワクワクするような広がりのある異次元世界で、友達にも先生にも親にも言わず、独りでひっそりと楽しんでいた。あれ程の熱意と集中が、高校生の時に学業に生かせなかったのは痛恨の極みだが、そんなものなんだろうな、所詮凡人なんだ。
という訳で、子供が学ぶ意欲を持つきっかけとは、そういうものなんだろうと改めて思った訳だ。それこそが純粋なモチベーションであり、学ぶ楽しさ、奥深さや幅広さを呼ぶものなんだろう。
今からでも新しいものを学びたい気持ちはいつもある。いつもいつも飲んで食って寝てばかりいる訳ではないのよ、私も。ま、それに近いけどね。
さて、話を【アラモ】に戻したい。
私も夫もこのアラモの闘いに於いて最も心が揺り動かされるのは、やはりデイビー・クロケットの存在や自由至上主義の精神、その実現のための勇敢さや犠牲、屈しない強さ、そして死にざまだ。
おそらくデイビー・クロケットに強く自身の信念を投影していたと思われるジョン・ウェインの、その志を最も強く感じるこの作品は、私たちにとっても最も大事に思う1本である事に間違いない。その理由はまた後で書くとして・・・
時代はメキシコ独立戦争後のメキシコ合衆国からのテキサス独立戦争のさなか。そもそもどことどこが闘っていたのかの認識からして、何となく解っていなかったような気がする。アラモの全滅の後、メキシコ軍に圧勝したテキサスがメキシコから独立して一時は共和国であった事、その後アメリカに併合された経緯なども殆ど知らなかった。
だから西部劇のバリエーションのひとつとしか観ていなかった子供の頃とは、今回、随分と違う感慨を持った。
アラモの砦(と言っても教会でしかない)でのテキサス軍の犠牲がどういうものであったのか、そこで戦って全滅した人たちというのが何者であったのか、今回は良く解った気がする。しかも傍に当時のアメリカの歴史や、この作品の作られた背景に詳しい解説者(夫の事ですが)がいてくれたので、尚更よく理解出来た。
アラモで全滅したテキサス軍には、3人の大佐がいた。テネシーから義勇軍として参加したデイビー・クロケット大佐(ジョン・ウェイン)、開拓者でありながらテキサス正規軍に参加して大佐に任命されていたジム・ボウイ(リチャード・ウィドマーク)、そしてウィリアム・トラヴィス大佐(ローレンス・ハーヴェイ)。この3人の大佐の、それぞれの人間性や考え方の違い、しかしそれを乗り越えたところで目的をひとつにした犠牲的役割の完遂。
ローレンス・ハーヴェイは、この作品のトラヴィス大佐役が一番カッコ良かった気がする。最晩年の・・・と言っても45歳没なのだけど、TVドラマ【刑事コロンボ】のあの犯人役は、ちょっと哀れ過ぎるんじゃないか。初めてこの俳優を知ったのは小学生の頃に観た【逃げる男】という映画だった事だけは覚えているのだけど、どんな内容だったのかさっぱり思い出せない。同じ小学生でも夫とはえらい違いだ。ボーッと生きていたつもりはないんだけどな。
何故、援軍は来なかったのか。圧勝する為の準備に時間が必要だった、それまでの時間稼ぎとしてアラモは犠牲になったのだ。サミュエル・ヒューストン将軍の名はテキサス州の都市名として残ったというのに。
そしてヒューストン将軍がメキシコ軍との戦いに於いて上げたとされるときの声「Remenber the Alamo!」(もう一箇所の大量虐殺の舞台となった「ゴリアド」の地名も同時に叫ばれるのだが)は、後に「Remember Pearl Harbor !」と言い換えられて行く。
アメリカにとってのアラモとは、そういうものなんだろう。繰り返し映画にも描かれ、ジョン・ウェインが長年温めていた執念の作品でもあり、莫大な製作費ゆえに興業的には成功していたにも関わらず赤字となり、彼は自身の資産をいくつも手放したと言われる。
複雑な歴史背景を持つドラマで、日本人が簡単に理解出来る歴史ではないのだけれど、それにしてもアメリカが好む正義と大儀を行う為に尊い犠牲となったアラモは、まさに「真珠湾」であり「9.11」でもあったように感じる。
それはさておき、今回の映画の音楽も【リオ・ブラボー】や【OK牧場の決斗】、【真昼の決闘】、そして【ローハイド】などのテーマ曲を担当した偉大な作曲家ディミトリ・ティオムキンである。「The Green Leaves of Summer」の哀愁に満ちた旋律は、一定以上の年齢の人であれば誰でも一度は耳にした事があると思う。私など、あれからずっと頭の中で流れているよ、この曲が。
尚、【リオ・ブラボー】の中でトランペットで奏でられていた名曲「皆殺しの歌」は、【アラモ】での戦闘シーンでも使われていて、アラモ砦の全滅を思うにつけ、何ともやりきれず悲しい。
冒頭、最も大事に思う作品のひとつと書いたが、作品というよりもアラモの闘いでの戦士たちの犠牲に関してのシンパシィである事は間違いないだろう。それはまた別の映画、南北戦争を描いた【グローリー】に描かれるマシュー・ブロデリック演ずるロバート・グールド・ショー大佐の、アメリカがどういう国であるべきかについての信念や人間としての誇り、そして大いなる犠牲とも似ている。リンカーンのゲティスバーグ演説の全文を知った時の感動(などという言葉では言い尽くせない感情が湧いたのだけど)とも似たものがある。
何故、そこまでの感動とシンパシィを覚えるのか、それも実は自覚している。そこには、私の夫が辿って来た道、宮仕えながら指導者としての自分の役割意識や大きな犠牲をも厭わないで貫いていた、その精神を見出すからだ。
詳しく書きはしないけれど、私は夫のその精神や品性の高さを誰よりも理解し、出会った時からずっと尊敬し続けている。だから、同様の魂を垣間見てしまった時、強く心が揺さぶられるのだろう。
なんちって、カッコつけ過ぎましたかね。でも改めて強くそう思ったのは確かだから、真面目に書いておくんだ。生きているうちに。
そんな諸々を、映画の余韻が覚めないまま、美味しいものを食べながら今日も2人で話す。土曜日は恒例のステーキの日なので、アメリカン・ビーフのステーキを楽しみ、アメリカの歴史の一端に触れる・・・というのはこじつけか。やっぱり飲んで食ってばかりじゃないのか?
まあ良いじゃん、充分過ぎるくらい仕事したよ、もう引退よ。
ステーキ肉は今回、少し厚めだったせいか、2人分で750円くらいした。焼いてから切って、ニンニクのみじん切りをバターで炒め、醤油で香ばしくさせてから肉にまぶしてある。切ってあるから箸でパクパク、食べる事にのみ集中出来る。
付け合わせは今日も人参のグラッセとアスパラのバター炒め、そして大好きなガーリック・バターライス。
と言いつつ、角煮を作るプロセスで出来たラードは取ってあって、炒め物に使っているんだけどね。美味しいんだ、これがまた。
貴女には言われたくないね、ジャムちゃん。待っていなさいよ、ほどなくそっちに行くから。すっかり溶け合ってバターになろうね。その前にお尻ペンペンしてあげるよ。
それにしても、歴史の勉強は大事だと、大人になるとよく解る。
でも本当に大事な歴史は、学校では教えない事ばかり。学校の歴史の授業のつまらなかった事、教科書のつまらなかった事、そして先生の教え方や人間性のつまらなかった事。
思い出すだけで腹の立つ、生徒には心や感情なんかないと思っていたんじゃないかと疑いたくなる教師もいた。もう生きていないだろうけど、当時のデリカシーのない言葉の数々、忘れてはいないからね。
それはいつかまた、たっぷり書いてやる。あ~ムカつく。私なんか真面目な生徒だったのによ、よくもまあ、色々と生徒の心を損なってくれたものだと今でも残念に思う。学校の教師を尊敬出来ないのは不幸な事だったよ。
夫の小学生時代にはとても素晴らしい恩師がいて、話を聞くたび、今も活きている夫の雑学の基礎を作ってくれた人だという事がよ~く感じられる。羨ましい。三田先生という、お坊さん先生だったそうだ。こちらも、もはやご存命ではあるまい。
学びたければ、自分で強い意欲と熱意を持ち、道が拓けるようその熱意をアピールしなければダメね。今頃になって解っても、もうかつて程の熱意も向上心も元気も無いよ。
せめてもの願いは、人に迷惑掛けずに死ねますように。父と母のように。
by kazue_gomajam
| 2019-06-22 23:58
| 映画・ドラマ